葉っぱのペン画シリーズは、最初は、単にビジュアルの面白さを狙ったシリーズにするつもりでした。
モノクロの葉っぱはコントラストも美しく、ペン画とは非常に相性がいいことは分かっていたので、まずは、色々な異なるタイプの葉っぱを描いてみようということで、資料を集めました。

しかし、制作の途中で、もう少しテーマを掘り下げることも可能だなと思いつき、結局、life per leaf というシリーズとして制作することにしました。翻訳が少々難しいテーマですが、「葉に寄せて生を思う」といったところでしょうか。

例えば、一作目のこちら:

当初は、values of leafというタイトルにする予定でした。valuesというのはコントラストのことで、葉っぱの明るいところと暗いところ、その対比といった意味合いです。
ただ、葉っぱのコントラストを描くにしても、光源がどこにあってどんな風に光があたっているのかが必ずしも明確ではない描き方をしています。
参考写真はあり、そこでは非常に整然としたコントラストの変化が見て取れますが、敢えてそこをぐちゃぐちゃにしています。
それというのも、葉っぱのコントラストがテーマであれば、葉っぱの形を借りて色々な諧調の違いが表現されてさえいれば、「整然とした変化」は、敢えて描く必要のない要素だからです。
参考写真の通りに諧調の変化を再現してしまうと、それは単なる葉っぱの絵になってしまい、「葉っぱで観察されるコントラストの種類」を描いた作品ではなくなります。

しかし、life per leafにテーマを変更した後は、これを電子的に編集して、このようにしました:

タイトルは、「ネガとポジ」。
昔、黒澤明監督の自伝(のようなもの)の「蝦蟇の油」という本で読んだエピソードを念頭においてつけたタイトルです。
黒澤監督には、無声映画の弁士をしていたお兄さんがいましたが、若い時に自殺してしまいます。このお兄さんと黒澤監督のことを「ネガとポジ」と表現した人がいたそうで、黒澤監督自身はこの本の中で、兄というネガなしに自分というポジはなかったと書いています。
この言葉がとても印象に残っていたので、今回のタイトルに使わせていただきました。

また、コントラストが整然としておらず、かなりランダムに描かれていることも、life per leafというテーマにはマッチするでしょう。
実際、自分の人生の中でハイライトに相当する部分と暗部の間に、完璧に均等な度合いでのグラデーションが存在するというのは考えにくいと思います。暗い部分と明るい部分が同時に違う場所で存在したり、自分では暗部と思っていたところが、後から振り返ってみると、むしろハイライトだったかもしれない。
そうした鵺的(ぬえてき)なところを、葉っぱをモチーフとして描いてみました。

シリーズ2作目はこちら:

これも、当初はlines of leafというタイトルで、単純に葉っぱを構成する線を強調した作品にするつもりでした。
しかし、life per leafシリーズの一つに位置付けるなら、それではコンセプトとして弱いため、例えば、Steve Jobsの有名なスピーチに出てくる「点と線」ではどうだろうと考えました。
しかし、この図案では、「点」に相当するものが何もないため、このコンセプトは無理があります。
そこで考え直して、no straight linesとすることにしました。日本語なら、「(何事も)まっ直ぐにはいかない」といったところでしょうか。
ただ、ポストカードとして流木オブジェを作るにあたっては、全体の白黒のバランスを考えて、反転版を使いました。

そして、三作目、「カオス」:

どういうわけか、ペン画やる人って、必ず一作はこういう詰込み系のもの描くよなぁと思い、私も描いてみました(笑)。
しんどかったです(笑)。

四作目、エリクシール:

葉っぱの表面にある水滴は、表面張力で丸い形になっているものが多いです。
葉っぱをゆすったり、こうした丸い葉っぱの場合、傘から水を振り落とすようにして回すと、水滴がパッと飛び散っていきます。
エリクシールというのは、秘薬、万能薬、不老不死の薬といった意味合いで使われることが多い言葉ですが、葉っぱは、表面で水分を弾いてしまい、まるでそれを吸着しようとはしない。
転じて、まやかしの万能薬に頼らない、騙されない、自分の力で歩いていくというコンセプトの作品にしました。

本当は、もう一つ、展示前に描き上げたかった作品があったのですが、時間切れで今回はあきらめました。
搬入後にまた少し時間を取ることが出来るため、その際に追加作画しようと思います。
というか、このシリーズは、その描きかけだった一作品だけではなく、他のものも継続して制作することになるでしょう。

現時点での展示用オブジェの仕上がり: