「アニメの作画~パステルを使ったアニメ作り~1」で、「パステル素材」という言葉を使いましたが、今回の作品では、美術としてのパステル画よりも、色とテクスチャの素材としてパステルを使った部分が大きいです。

一口に「パステルを使ったアニメ作り」と言っても、
・背景美術としてパステル画を使うのか
・彩色の手段としてパステルを使うのか
2つのアプローチ方法があります。
今回、素材としての活用がメインになったのは、作品の特性と、使用できる機材の限界が大きな理由でした。

1.作品の特性
アートアニメーションが、所謂商業アニメと大きく異なるところは、作風の幅が非常に広いことです。
商業アニメの場合、キャラクターはさておき、背景については、それが街であれ、森や山であれ海であれ、写実的な作画をするのが普通です。

アートアニメーションでも、このアプローチを取った作品は沢山ありますが、その一方、写実性のしばりがまったくかからない、作品全体が一つのグラフィックデザインといったものも多いです。
敢えて「きちんと」描かずに、空白を多くして、見る人に多くの想像の余地を与える作風のものもあります。

か~やの海を作るにあたり、最初のうちは、どちらのアプローチにするか、明確な考えは持っていませんでした。
興味があったのは、全体をグラフィックデザイン的な仕上げにすることでしたが、いざ取り掛かってみると、この作品のストーリーにそぐわない気がしました。

今でもハッキリ覚えているのですが、このシーンを作った段階では、まだグラフィックデザイン系のアプローチで行こうかと思っていました。


しかし、これより後に出てくるバス停のシーンを作った時に、グラフィックデザイン系の作画で統一するのが難しいことに気づきました。
このシーンです。
当初は、グラフィックデザイン系で統一するつもりで、空白にバス、バス停、行先表示アイテムを配置しただけにしていました。
しかし、このシーンでは、故郷の村の自然の光や緑あふれる雰囲気から一転して、アーバンな空気感、風通しが悪い感じを出す必要がありました。
グラフィックデザイン系のアプローチをしてしまうと、それがどうにもこうにも表現できない…

そこで、地面を追加し、アーバンなバスターミナルらしく、乗り場にはタイルを敷き、更に、首都のバス停というのは、出発待ちのバスがいくつか止まっているのが普通なので、それも後方に追加。
これで、自分がこのシーンで出したかった雰囲気は出来たのですが、代わりに、「グラフィックアプローチ系でアニメ作品全体を統一する」というプランは、捨てざるを得なくなりました。

グラフィックデザイン系アプローチを却下するということは、背景に関して、写実の要素を取り入れるということなので、であれば、「パステル画」を背景美術として使うという方法が取れそうなものです。
しかし、ここで、次の「使用できる機材の限界」がネックになりました。

2.使用できる機材の限界

パステル画は、手作業で制作します。
従って、動画編集ソフトに取り込むためには、作画したものをスキャンして電子データに変換する必要があります。

我が家のスキャナは、A4サイズです。
従って、パステルで何か作画するにしても、A4以内のサイズというしばりがかかります。
更に、動画はワイドスクリーン版で制作するため、アスペクト比が16:9。
A4の横を16、それに対して縦が9になるように用紙をカットすると、これは、パステルを使って写実的な背景を作画するには、小さすぎるサイズになってしまいます。

今年に入ってから、パステル画の教室の方では、F6という大きなサイズの作品を描き始めました。
このくらいのサイズを使えれば、アニメ背景美術にするのに相応しい細部の描きこみも、ギリギリで可能かもしれません。
しかし、スキャナのサイズが小さいため、大きな原画を描いても、アニメに使うという観点では、意味がありません。
コンビニに大きなコピー機がありますが、さすがに、お店のコピー機をパステルの粉で汚すわけにもいきません。

そんなわけで、アニメにパステルを活用する方向性としては、
・色素材、テクスチャ素材となるものを小さな紙に目いっぱい大きく描いて
・それを高解像度でスキャンしたものを、映画の画面の中では小さく縮小して使う
ということになりました。