こちらは、「検証」という記事で使ったアイキャッチ作品の改訂版です。
先日、ようやく完成しました。

猫レスキューにもいろいろあって、アメリカでは、Canopy Cat RescueというNPOが、高い木に登って降りられなくなった猫専門のレスキュー活動を展開しています。
どんな人がそんな特殊な仕事をしているのだろうと思ったら、本業は”arborist”、 「樹木の栽培や手入れ方法に詳しい専門家」だそうで、日本語では単純に「アーボリスト」とカタカナ読みしている模様です。

Facebookで彼らのページを見つけてフォローしていたところ、あるとき、
「必ずしもすべての猫がレスキューに来た我々を歓迎するわけではない」
という投稿を見ました。
ある猫などは、救助者が近づいてくると、敢えて反対側の枝に逃げてしまい、救助者がそちらに移動すると、今度はまた反対側の枝に逃げてしまう。
猫にとっては枝から枝への移動はさほど難しくないかもしれませんが、命綱で自分の体を吊り下げている救助者にとっては、これがどれほど困った事態であることか。
最終的には、移動中の猫にさっと手を伸ばして何とか救助できたそうですが、高所でのこうした作業、専門家とは言え救助者も怖かったことでしょう。

そうしたリスクを負いながら助けに来た自分を、猫が歓迎してくれればまだ報われますが、場合によっては、シャー!なんて威嚇されてしまうこともあるのでしょう。
このエピソードには何ともいえないほろ苦い気分になり、思わず、
「生き物の信頼を獲得するのは簡単なことじゃないから…」
と、別のレスキューグループの経験を思い出しながらつぶやきました。

子猫時代、適切な時期に人に慣らしておかないと、猫は基本的に人間に懐くことはないといいます。
野良として生きる場合、我々人間を含め、簡単にほかの生き物に懐かないというのは、実は、身を守る上で必須の条件でもあります。

一度飼い猫だった猫が捨てられて野良になると、屋外で虐待被害に遭うリスクが高いと聞いたことがあります。
生まれついての野良は警戒心が強く人間に自分から近寄ることはなく、従って、嗜虐趣味の人間の手にかかるリスクも低い。
一方、飼い猫経験がある猫は、飼われている間に人間を信頼することを学んでしまうため、捨てられてもなお、近づいてくる人間に簡単に懐いてしまう。
その人間がどんな意図で自分に近づいてきているのか、判断することもできずに。

悲しいことに、これは猫に限った話ではなく、人間にも該当します。
人助けでは、往々にして親切な行いに対して不信で報いられることがあり、これはつらいものですが、そうした不信はその人が身を守るために必要なものだったのだろうと理解し、それも織り込み済みで自分にできることをするというスタンスが必要でしょう。
親切と信頼しか存在しない世界があれば理想的ですが、現実はそれには程遠い。
そんな連想でほろ苦い気分になり、このペン画を描いたわけです。

いつもは、自分の作品にタイトルをつけるのは特に難しくないのですが、この作品に関してはいいアイデアが出てきませんでした。
“Trust does not come easy”では単純すぎるし、作品コンセプトとしてはそれだけではないため、この少々入り組んだ意図の作品をずばり表すいいタイトルがないものか。
考えあぐねてお手上げだったので、いつもお世話になっているアメリカのアートサイトのフォーラムで相談してみました。
そうしたら、オレゴン在住の方からこれ以上ないようなタイトル提案が。
“Reaching for Trust” !
これで決まりですね…😌
伸ばした手で何とか捕えようとしているのは、逃げ惑う猫ではなく、築きにくく壊れやすい信頼なのかもしれない。
そんな意味合いを持つ素晴らしいタイトルだと思います。